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ほーちゃんの趣味手帖

主にゲームについて語ります。二次創作あり。苦手な方はご注意ください

【遙か2】花梨SS(幸鷹ver.)

遙か2 SS

※こちらは、遙か2本編で語られていない花梨の心情を、想像・捏造した二次創作となります※

 

 

てのひら ~幸鷹 障害のある恋~

 

 ほんのりと侍従の薫る室内で、花梨は自分のてのひらを見つめている。
 じんじん、じんじん。
 このてのひらから伝わった痛みが、花梨の世界へと繋がっていた。
「ゆきたかさんは、わたしのせかいのひと」
 声に出してつぶやいてみると、確かなことになる気がする。それでもやはり、心はまだ宙に浮いたままだ。宙に浮いて、所在なげなハテナを浮かべている。
「ゆきたかさんは、わたしのせかいのひと」
 その真実に触れたとき、幸鷹は苦痛に顔を歪め、身をよじり、その尋常ない痛みは、花梨のみぞおちに直接落ちてきた。心と心の境目が曖昧になり、花梨は共に闘った。その痛みと――欠落した過去と。痛みの向こうには、生のままの事実が転がっていた。
 すべてが露わになると、幸鷹は涙を流し、花梨を抱きしめた。緊張で固まった花梨の体に、彼の不安と、混乱と、その中にあるどこか清々しい喜びが流れ込んできた。我がことのように嬉しかった。胸の苦しさ、切なさ、心の芯から湧き上がるような幸福感。それら全ては幸鷹のもので、花梨はそれを全身で感じ、ただひたすらに受け止めているのだった。
 幸鷹は去った。家へ帰った。この京では、彼の『我が家』とされている、藤原の家へ。
 紫姫は、遅くまで花梨の帰りを待っていた。花梨が無事に床に就くと、やっとほっとしたらしく、小さな欠伸を噛み殺しながら自分の部屋へと去っていった。いじらしい、と花梨は思う。そして少しだけ、京と自分の生まれた世界との間で揺れる幸鷹の気持ちの一端を理解したように感じる。――私にだって、この世界にもう、捨てられないものがある。
 うっすらと月明りの差す部屋の中、花梨は自分のてのひら、花梨の、そして幸鷹の世界へと繋がっていたてのひらと向き合った。それは、自分の心と向き合うことでもあった。
 幸鷹さんは、私の世界の人。
 その真実は、花梨の心の奥にしまい込まれていた、遠い場所への郷愁を呼び覚ました。私には帰る家がある。私が育った、私を形作った世界がある。
 けれど、目の前の京はあまりにもはっきりとした現実で、伸ばせば手が届く距離で、頑張らなければ滅びてしまう。毎日、『今日も頑張ろう』を積み重ねるうちに、少しずつ自分の世界が遠のいていく。漠然とした不安――夜ごと訪れる小さな寂しさ。
 こわいような気もしていた。こわくないと、自分に言い聞かせていた。
 幸鷹さんは、私の世界の人。私の世界に繋がる人。
 湯たんぽを抱きしめたようにじわじわと、お腹の底から、あたたかさが広がっていく。私の世界はちゃんとある。だって、幸鷹さんがいる。京の人のような顔をして、私の前に現れて、でもちゃんと私を見つけてくれた。
 もう一度、幸鷹さんの腕にすっぽりと包まれたら、もっと、私の世界を感じることができるだろうか。今、行く先に思い悩んでいる彼に、そんなことは頼めないけど。
 ――恥ずかしくて、頼めないけど!
 てのひらを握って、夜着の中に引っ込める。体の芯が、ぽかぽかとあたたかい。帰ってきたばかりの頃の動悸は鎮まって、宙に浮いてハテナを浮かべていた心も、胸の内のあるべき場所に収まって、明日に向けて、規則正しく回りはじめている。
 ぬくもりにくるまれて、花梨はすとんと眠りに落ちた。
 明日もまた、『今日も頑張ろう』と言って出かけるために。

 

 

突然、二次創作というものに挑戦してみようと思い立ち、その場の勢いで書いた作品。

幸鷹さんは、そもそもの展開がドラマティックなので味付けしやすいです……

 

 

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