ほーちゃんの趣味手帖

主にゲームについて語ります。ジャンルは雑多。プレイ速度は亀

【遙か2】バレンタインSS~頼忠編~

プロローグをお読みでない方は、先にこちら(【遙か2】バレンタインSS~花梨編~ - ほーちゃんの趣味手帖)をご覧ください。

 

 

 花梨にとっては勝負の日、その放課後。
 校門の裏側で、気配を消して佇んでいる人影を目ざとく見つけ、花梨は走り寄った。
「頼忠さん、いつもここで待ってると、そのうちみんなに怪しまれちゃいますよ」
 人影は、ふわっと柔らかな笑顔を浮かべて花梨を迎えた。
「先日、この付近で賊が出たと聞き及びましたので、こうしてお迎えにあがりました」
 花梨殿には指一本触れさせません、と頼もしく言い添える風変わりな恋人に、花梨は困ったなぁと頬を掻く。こうして大切にされて、こそばゆい気持ちになるけれど、
「不審者を見つけても、こてんぱんにしちゃだめですよ。捕まっちゃいますから」
「心得ております」
 本当かなぁ。花梨は、隣を歩きながら首を傾げる。なかなかこの世界に馴染めないこの彼氏は、既に、花梨の友達の間ですっかり有名人なのだ。
 ともかく、今日は大切な日である。花梨は、一旦問題を脇に避け、軽く息を吸い込んでから、思いきって言った。
「今から、ちょっとどこかに寄りたいんですけど」
 返事は、簡単明瞭。
「構いませんが、金がありません」
 一度だけ、二人で遠出をしたときに、すべてを花梨のお小遣いから支払わせたことを、頼忠はまだ気にしている。この分だと、頼忠の生活が安定するまで、しばらくは気にしつづけそうである。花梨は、こっそりとお洒落な店でのバレンタインデートを諦めた。
 とは言え、家の前まで到着してから、チョコレートを渡しているところを、両親に見られるのは何としても避けたい。花梨は、一生懸命言った。
「だったら、近くの公園に寄りませんか」
 対する答えも、やはり簡単明瞭だった。
「承知いたしました。参りましょう」
 花梨は、ほっと一息吐いた。これで、半分以上はクリアしたようなものだ。
 安心しきった花梨にとって、道中の頼忠の言葉は完全に不意打ちだった。
「私とて、いつでも、あなたと二人きりで過ごしたいと思っております。少しでも長く」
 花梨は、ふわぁっと舞い上がった。足取りが危うくなって、咄嗟に手を伸ばした頼忠に支えられる。
 私もです、と消え入りそうな声で答える花梨を見て、頼忠はそっと微笑した。年下の恋人を持つ男が、愛しくて仕方ない彼女に向ける、優しい笑みだった。

 

 

「頼忠さんが、校門で花梨を待っている。イメージはSP」と言う、超ざっくりしたプロットで書き上げた初ラブコメ

楽しんでいただけたら幸いです。

 

 

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