ほーちゃんの趣味手帖

主にゲームについて語ります。ジャンルは雑多。プレイ速度は亀

【天涯】共通√を母に遊んでもらった話

まず間違いなく、自力で完走できると思っていた。
高木作品の傾向は知っており、ヒロインの自己嫌悪や逃亡癖をスルーするスキルも鍛えられている。
何より、必ず起こるであろう理不尽な展開の数々を、笑い飛ばしながら乗りきることができると思っていた。わたしなら。

甘かったです。

 

結論から言うと、四月二十五日~八月十三日のイベントは、全て母に遊んでもらいました。
おまっ、できないことはマッマにやってもらうとかガキかよ! と言われたら、何も言い返せません。
が、母はとても楽しそうだった。
わたしより明らかに楽しんでいた。
そして、注意書き付きのプレイメモを残してくれました。

 

母に頼ることにした理由は、有り体に言えば体調が崩れはじめたからです。
プレイを始めてから、加速度的に体調が悪化した。
作品に感情移入しすぎてストレス過剰でダウンと言う、コントみたいな状態になった。
元々、自分は感情移入が激しいタイプで、ミュージカルを観に行ったら感動のあまり全身が麻痺してしまい、しばらく救護室のお世話になると言うこれまたコントみたいな失敗をやらかした過去がある。
とは言え、まさか乙女ゲーで。まさか楽しみにしていた作品で。
予想、できなかったんだよなぁ。

更に突っ込んで私事に触れると、自分は長いこと神経を患い、今は社会復帰目指してリハビリの真っ最中である。
真面目な話、こんなストレスフルなゲームを遊んでぶっ倒れている場合じゃない。
何やってんだ自分、と苦悩する日々が始まった。

すっぱりと遊ぶのを止められなかったのは、それでも魅力を感じていたからです。
高木作品って、心理学フェチ垂涎のゲームなんですよ。
それぞれの人柄や、きょうだい同士の共通点をじわじわと把握していく序盤は、わたしにとって最大のご馳走でした。
このわけがわからない弥島と言う家の人間模様を、自分の手で紐解いてみたい。
自分なりの言葉で語れるくらいに、彼らのことを知りたい。
そう思いました。

 

この作品の何が辛かったかと言うと、とにかく主人公が理不尽な目に遭うんですよね。
お家騒動に巻き込んでおきながら、主人公に謝罪も感謝もしない弥島家の人々。
無理だとわかっている仕事をやらせ、できないと叱責する弥島家の人々。
そんな彼らの我が儘を当たり前のことと受け止め、むしろ自分に責任があると思い込んで自己嫌悪に陥る主人公。
ただ罵倒されるとか、お弁当ガシャーンされるとか、そういう次元の話じゃなかった。
もっともっと理不尽で、利己的な人々に振り回される話でした。

とは言え、三男とのやりとりは笑えるし、次男もどうやら味方っぽい。
ひょっとしたら、何とか最後まで遊べるのでは……
そう希望を持ちはじめた矢先、あのイベントが起こりました。
そう、主人公の父の訪問です。

 

主人公の父については、ほとんど批判している方を見かけません。
昭和初期の父親なんてこんなもん、と言われれば、確かにその通りかもしれません。
けれど、わたしは許せなかった。
この人が、自分の娘が『弥島』のお家騒動に巻き込まれ、賭けに使われると知りながら、そのことを黙って帝都へと送り出したことが。
どうして私を行かせたの、と聞く主人公に、「お前がいつまでも店を継ぐなんて言っとるからだ」と父は答えます。
店を継ぐなんて無理だと納得させたかった、だから『弥島』へ行かせて現実を悟らせ、娘の志を折ろうとした。
最低だと思いました。
卑怯なやり口だと思いました。
自分の意のままに動かすためなら娘の心が傷ついても構わない、到底受け入れられない行動だと思いました。

それ、自分の店でやれよ。
自分の料理旅館を一週間くらい娘に任せて、その厳しさを突き付けてやれよ。

娘の伸びしろを見もせずに、甘いと突っぱねて将来を否定したのは、男尊女卑の思想が根深かった時代故でしょう。それはわかる。
けれど、だからと言ってそのために、娘の志が折れるように進んで仕向けたのはわからない。
出来ないと思わせたい仕事を、経験も教育も皆無の状態でわざとやらせて、出来ないと知らしめようとした。
そんな卑劣なことを実の父親がするなんて、思いたくなかった。

 

心をすっかり折られたわたしは、Vitaを放り出してしばらく泣きました。
そして、続きが知りたいから自分が遊んでもいいかと尋ねる母に、大人しく主人公のその後を任せました。

母は、GWを駆使してぐんぐん進めていき、本当に共通√の大半を終わらせてしまいました。
母が残してくれたプレイメモは、女中や小僧のシーンにはアンダーラインが引かれ、幸介やウメさんの叱責シーンにも要注意マークが書き込まれ、七月半ばの番付競争イベントには「ヒドイよ~~~危険!!」とコメントまで付いていると言う、まさに完璧な道標でした。
何と頼もしい、何と親切な、何とありがたい母親でしょう。
これでわたしのしばらくは、母の肩もみが日々の最優先事項となりました。

 

りん子と俊介は一切怖くなくなる、と母は言った。
幸介の態度も軟化する、と母は言った。
きくちゃんは元気になる、と母は言った。
ウメさんは味方になってくれる(厳しいけど)、と母は言った。

……よろしい、ならばそれを自分の目で確かめようじゃないか!!

と言うわけで、改めて母のプレイメモ片手に、四月二十五日からプレイ再開した次第です。
二十五日は、りん子さんと俊様倶楽部が一堂に会する恐怖のイベント。
なんですが、母の話を聞いた後だとちっとも怖くなかった。

それどころか、りん子さんが可愛く見えました。

大 勝 利 !!!

 

店主関連のイベントは、ざっくり飛ばしながら進めていくことになるかと思います。
公正なレビューができなくなることだけが気がかりですが、それを犠牲にして楽しく遊べるなら安いものです。
弥島家の人々を、自信を持って大好きと言えるようになる日も近いでしょう。

お母さん、ありがとう。